■柊が雷を嫌いな理由。
「―――はっ…!あっ、あうぅッ…、嫌…だ…ッ!やだ、楓…や、だ…!」
柊は、いつも泣いて嫌がる。
でも、抵抗はしない。
弱い力で僕の肩を掴むか、身をよじって僕から逃げようとするか、どちらかだ。
「―――柊は、いつも嫌だって言うよね。毎日してるのに、もう身体は慣れてるはずなのに、それでも嫌がるよね。」
「ひぅぅッ!」
僕が柊の一番好きなところを突き上げてあげると、柊は高い声で鳴いた。
「ひぁッ、あ、嫌、いやだッ、や、かえ…ッ、やめ…、やあ…ッ!」
ガクガクと僕が柊の中を突くと、柊はボロボロと涙を流し、嫌だと繰り返し喘ぐ。
だけど柊の身体は言葉とは裏腹に、快楽を感じ取っていた。
前はしっかりと反応を示し蜜を垂らし、ナカはトロトロに蕩けそうに柔らかいのに僕にしっかりと絡み付いて締め上げる。
柊はこの行為は好きではない。
だけど、身体はちゃんと快楽に染まっていく。
心と身体のバランスがとれずいる事実に、柊はいつも涙を流した。
―――その姿は、僕を何より興奮させる。
「ふふふ…っ、柊は、毎晩こうして抱いても、いつも嫌だって言うね…。まるで、処女みたいだ。もう何回もしてるのに、そんなに嫌がる柊が可愛くて、だから僕も何度も君を汚したくなるんだよ?」
「―――っ、」
僕が『処女みたいだ』と言うと、喘いでいる中でも眉間にしわを寄せ僕を睨み付ける柊。
「でもね、そんな処女みたいに嫌がる癖に、身体はしっかり反応してるんだね。ここなんて、僕が出ていくのを止めるみたいにこんなに僕に絡み付いてるよ…?ほら、柊のここだって僕が突き上げる度にこんなに固くなって、我慢出来ずに溢れてきてる…。嫌がってるのにこんなに淫乱な身体で…まるで娼婦みたいだね、柊。」
「…ッ!!」
僕が『娼婦みたいだ』と揶揄すると、今度は唇を噛み締めて泣きそうな表情になった。
―――その顔が、凄く、そそる…!
僕は柊の表情に興奮し、柊のナカを犯している欲望がドクンと脈打ちより一層大きくなる。
「んぁッ!…な、んで…!?」
ナカのものが大きくなり、更に圧迫された柊が喘ぐ。
「―――柊が、柊が悪いんだよ…?そんな可愛い顔をするから…!ねえ、柊はどうしてそんなに可愛いの…?柊がそんなだから、僕は柊を何度抱いても足りないんだ。何度も何度も、数え切れない程柊を抱いているのに、それでも足りないんだよ…!」
「うあッ、や、可愛くなんか、ねぇ…!」
「ううん、柊はね、世界で一番可愛いよ…っ。そんなに可愛いから、僕は毎日不安なんだよ?他の奴等が可愛い柊を僕から奪っていくんじゃないかって…だって柊はこんなに可愛いんだから…!」
「いやだ…!違う…!違う、違う、ちがう…!!」
泣きながら、喘ぎながら、違うと首を横にふる柊。
柊は可愛いと言われるのが嫌いなようだ。
可愛い、処女みたい、娼婦みたい―――そんなことを言う度に、柊は傷付いた表情をして、泣く。
多分男としてのプライドを酷く傷つけられ、それで泣いているのだろう。
柊が傷付き泣いている……可哀想だと思うのに、そんな柊が可愛くて、もっともっと泣き顔を見たくて、ついつい柊の傷付く言葉を言ってしまう。
「可愛い、可愛いよ、柊…!君を、もっとちょうだい…!もっと、もっと、もっと…!!」
「あっ、あぐっ、嫌、あ、そんな、奥ッ、ダメ…深…っ、や、も、無理…ッ、やああ!!」
これ以上ないぐらい一つになっているというのに、まだ、もっともっと柊のことが欲しくて、僕は更に柊の奥深くを抉った。
柊のナカは狭くて熱くてとても気持ちがいい。
だけど僕はその感覚よりも、柊の泣き顔に興奮するんだ。
必死に僕の肩にしがみつき泣きじゃくるこんな柊の可愛い姿を見て、興奮しない訳がない。
「は…ッ、柊…、も、イク…!出すよ、柊のナカに…!」
「―――!!」
腰を打ち付ける速度を早めながら僕が柊の耳元でそう囁くと、柊は目を見開きガタガタと身体を震わせた。
「や!ぃやだッ、ナカ、やだ!!」
そう言って必死にシーツを掴み身体を捻り僕から逃げようとする柊の腰を掴み、更に柊の奥に欲望をグリグリと突き立てる。
「ぅあああッ!」
「ねえ、どうして逃げるの?大丈夫、柊がお腹を壊さないように後で僕がちゃんと掻き出してあげるから…」
柊が中出しを特に嫌がるようになったのはごく最近だ。
前も嫌がってはいたが、近頃は特に中出ししようとすると脅えながら逃げようとする。
「ぃや…ッ!だって、楓…ッ、最近、変なこと…言う、から…ッア!」
「変なことって…僕と柊の赤ちゃんが出来るかもしれないってこと?」
ガクガクとうなずく柊。
そう、僕は最近柊の中に出す度、柊に『僕と柊の赤ちゃんが出来るかもしれないね』と言い、柊のお腹を優しく撫でる。
毎晩抱き合っているのだから、もし柊が女の子だったらきっと僕と柊の赤ちゃんが出来てるよね…。
そう思い、そのまま言葉にしたら柊は脅えながら泣き出してしまった。
―――その泣き顔が、たまらなかった…。
それから僕は柊を抱く度に『柊との子供が欲しい』と言った。
柊との間に子供が欲しいと思ったのは本心だ。
僕もいつか、父さんや母さんが築き上げてくれたような幸せな家庭を作りたい―――柊と一緒に。
子供が生まれたら、うんと可愛がるんだ。
男の子でも女の子でも、僕に似ていても柊に似ていても、どんな姿だって愛してあげられる自信がある。
だってその子は、僕と柊の愛の結晶なんだから。
抱きしめて、頬にキスをしてあげて、大事に大事に育て上げたいな。
僕と柊とその子供と―――幸せな家庭を、築きたい。
「変なことなんかじゃないよ?僕は君を愛してるんだ。だから、柊との子供が欲しいんだよ…。柊は虐待されて育ったから子供を育てるのが不安なんだね?大丈夫だよ、僕が一緒に愛情をたっぷり注いで育てるから。ねえ、名前はどんなのがいいかな?男の子の名前と女の子の名前、両方考えておいた方がいいよね、ねえ柊…」
「やめろッ!!」
柊がドンッと、僕の胸を叩いた。
「やめろ…!ど、して、…んなこと言うんだよ…!?ッ、俺は、男だ…!!どれだけお前に抱かれようと…俺は、男なんだよ…!!赤ん坊なんか、出来るわけないだろ…!?」
柊は顔を歪ませ、必死に僕に訴える。
僕に抱かれる度ズタズタに引き裂かれる男のプライドを、それでも必死で守ろうとしている柊。
その様がとても可愛くて、僕はもう少し意地悪をしたくなるんだ。
「わからないよ…?男同士でも出来るかもしれないよ?ね、だから、赤ちゃん出来るように柊の中にいっぱい出してあげるね…!」
そう言って僕はより一層強く柊の中を突き上げる。
「あッ!や!いらな…!赤ん坊…なんか…欲しく、なぃ、から…ッ!だから…!や…!出すな…ッ!嫌だ、あ、や、出さないで…ッ、嫌だ…!やめろ…ッ、や…!お願い…だから…楓…!や、ナカ、やだ…!い、あ、あ、アアアアアアッ!!」
逃げる柊の腰をガッチリと掴み、最奥を犯す。
出さないで、出さないでと必死に泣いて叫ぶ柊―――その姿は処女が強姦されながらも妊娠を拒んでいるように見えて―――僕はもう、我慢が出来なかった…。
「ふふっ、ほら、出すよ、柊のナカに、ほら、柊、ちゃんと受け入れるんだよ…!可愛い可愛い、僕だけの柊…!!」
「ひあっ!やああッ!嫌ぁ!!お願、お願い、楓ッ、許して…!や――――あ、イヤ、ッああああああああッッ!!」
「く―――ッ!」
柊の必死な訴えも虚しく、僕は柊の中にありったけの欲望を吐き出した。
同時に柊も良いところを繰り返し攻められ、耐えきれずに果て、あまりの快楽に気を失ってしまった…。
気を失った柊の身体を濡れタオルで綺麗にしていく。
目蓋を閉じて寝息をたてている柊の顔には疲労感が伺える。
―――ちょっと無理させちゃったかな…。
今日は学校から帰ってきて、どことなく柊がしんどそうにしているのを知っていた。
だけど熱はなかったしご飯も普通に食べられていたから、つい我慢が出来なくていつものようにベッドに押し倒してしまった。
僕の肩を掴む手の力も普段より弱々しかったから、多分本当にしんどかったんだろう。
いつもより弱々しい柊を見て、余計に興奮してしまい、欲望のままに抱いてしまった。
「―――ごめん、ね…。」
僕は眠る柊の頬にキスを落とし一言謝罪する。
いつも、抱いた後に後悔する。
柊は、僕の大切な人なんだ。かけがえのない存在なんだ。
だから、大切にしたい―――優しくしてあげたいと思うのに、柊を抱く時は歯止めがきかなくなる。
嫌だ嫌だと泣き叫んで許しを乞う柊を無理矢理押し倒して犯す。
こんなことをしているのに、柊は本気で僕から逃げ出そうとはしない。
そんな柊の優しさに、いつもつけこんでしまうんだ。
―――僕は柊の中に指を入れ、中に出した僕のモノを掻き出す。
「―――ぅ……」
いつもなら気を失っても、中に指を入れると目を覚まし、自分で出来るからとそのままシャワーを浴びに行ってしまうのだけれど…今日はよほど疲れているのか、少しだけ反応をしたけれど目を覚ます気配はない。
中も綺麗にし終わり、無防備に眠る柊の身体を見下ろす。
滑らかで、綺麗な肌。
平均的に筋肉はついていて弱々しい感じはしない。
女性のような柔らかさはどこにもない。
今は閉じているがつり上がった鋭い目。
柊自身が言うように、外見だけならば僕の方が女っぽいのだろう。
だけど、僕には柊が世界中の誰よりも可愛く見える。
周囲の人間は誰もが柊よりも僕の外見を褒める。
柊はこんなにこんなに愛らしいのに、周囲の人間はみんな頭がオカシイみたいだ。
だけど柊を他の人間にとられたら困るから、周りのみんながそう思っていることは好都合だった。
可愛い柊の全身を舐め回すように思う存分眺めた後、柊の膝裏に手を入れ、少しだけ足を持ち上げて足の付け根辺りの内腿を確認する。
そこには赤い痕がたくさん付いていた。
はじめ、柊の首筋にキスマークを付けたら柊は物凄く怒った。
それ以降、見えるところには付けないでほしいと言われたから、僕は他人が絶対に見れないココにキスマークを付けることにした。
ただでさえ敏感なソコを強く吸われるのを嫌がる柊に「じゃあ見えるところに付けてもいいの?」という言葉で抵抗を奪い、柊が僕だけのものだという証をたくさん残していった。
―――そう、柊は僕だけのものだ……。
他の誰にも渡さない…!!
身体を清め、服を着せてあげた柊を強く抱きしめ、僕も眠りについた……。
―――朝。
窓の外の雨音と僅かに聞こえてくる雷の音で目が覚める。
時計を見ると7時半を過ぎていた。
今日は休日で学校が休みだから久しぶりに寝過ぎてしまった。
柊は昨晩のまま、僕の腕の中で大人しく眠っている。
僕に寄り添って眠る柊の額にキスを落とす。
僕は柊の温もりを唇で確かめ―――
……熱い?
「柊…!?」
僕は思わずガバッと身を起こして柊を改めて見下ろす。
「―――う……ぅ……」
ハアハアと息苦しそうに呼吸をする柊の頬はいつもより赤い。
額や首筋には汗が滲んでいる。
額に手を当てると、明らかにいつもより熱かった。
「大変だ…!熱が…!」
どうしよう…!
昨日、柊はしんどそうだったのに、僕が無理をさせたから―――!
僕は急いで体温計と水を入れた洗面器、タオルを持ってきた。
―――38.6度
柊は平熱が低いからこんなに熱があったら相当苦しいだろう。
早く病院に連れていかないと…。
「…ぅ…っ、ごめん、なさい…!」
眠っている柊の口から泣きそうな声がもれ、目尻から一筋涙が流れた。
柊はよく悪夢を見てうなされる。
夢の中でまた母親に叩かれているのだろうか。
「―――っ、ごめ…なさ…母さ…、ごめん、なさい…!」
「柊、柊、起きて…!大丈夫、あの人はいないから…大丈夫だから…」
僕は柊の肩を揺する。
「あ…ごめ…紅葉…ッ、ごめん……ごめん……!」
―――紅葉。
柊は寝言でよく紅葉に泣きながら謝ることが多い。
どのような夢を見ているのかは聞いても答えてはくれなかった。だけど柊は紅葉にもよくなついていたから、きっと紅葉の死を今も悲しんでいるんだろう。
どんな夢を見ているにしても、苦しんでいる柊を早く夢から解放してあげたくて、僕はさっきよりも強い力で柊の肩を揺さぶった。
「柊!柊、起きて、柊…!」
「…!」
目を覚ます柊。
柊は何故か僕を見ると目を見開き、青ざめて泣き出した。
「あ…あ、あ、あああ…!!ごめ…!ごめん、紅葉…!!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…!!」
「ひ、柊…!?どうしたの、柊…!?」
突然泣きながらうずくまってしまった柊にビックリする。
一体柊はどうしたんだろう…。柊はずっと紅葉にごめんなさいと言っている。どうやらまだ夢の続きを見ていると勘違いしているのかもしれない。僕のことを紅葉だと思い込んでいるようだ。
「柊、僕だよ、楓だよ。柊、大丈夫だから落ち着いて…!」
「―――か、えで……?」
「うん、そうだよ。…怖い夢を見てたみたいだね。でももう大丈夫だよ、全部全部夢だから…。」
「ゆ…め…」
「悪夢を見るのも無理はないよ。柊、苦しいだろう?熱があるんだよ。ごめんよ、昨晩僕が無理をさせてしまったから…今から一緒に病院に行こう。お医者さんに診てもらってお薬を飲んで寝ていればよくなるから―――…」
「いやだッ!!」
「!?」
『病院』というキーワードを聞くと、柊は僕にしがみついて叫んだ。
「いやだッ!病院はいやだ…!行きたくない!!行ったら帰ってこれない…!」
「柊…!」
僕にしがみついて泣きじゃくる柊。
いつもとは全く違う柊に戸惑いを隠せない。
確かに柊は病院を嫌がる。幼い頃両親に『病院と警察に行ったら二度と家に帰ってこられなくなる』と脅されていたから。
今ではそんなことはもうないと知っているけれど、身体が拒絶するのだろうか、風邪を引いて病院へ行こうと促しても『平気だ』と一言言って市販の風邪薬を飲んで寝てしまう。
―――こんなに泣きじゃくって病院を嫌がったのは、子供の頃だけだ。
「う…っ、いやだ…!楓と会えなくなるなんて、いやだぁ…!!」
―――柊の今の口調は、子供の頃の柊そのものだ。
子供の頃の夢を見ていたせいか…熱で朦朧として、子供の頃のような性格になってしまっているのだろうか。
今の柊を見ていると、酷く懐かしい気持ちになる。
―――まだ、身体を重ねる前の…手を取り合って笑いあっていた頃に、戻ったみたいだ…。
「…うん、分かった。病院には行かないよ。だから安心して柊…。」
泣きじゃくる柊の背中をポンポンと優しく叩く。
「…本当?…病院、行かない…?」
柊は不安そうな顔で僕を見上げる。
「うん、本当だよ。さ、ベッドに横になって。熱が下がるまでちゃんと寝てないと駄目だよ?」
「…うん。」
僕が優しく言い聞かせると柊は大人しくベッドに潜った。
さて、何か柊の食べれそうな…お粥でも作らないと。いや、それより水分をとらせるのが先かな。とりあえず水を持ってこなくちゃ―――
そう思って立ち上がった僕の服の裾を、柊が慌てて掴んだ。
「楓…どこ、行くんだ…?」
どこかオドオドした様子で尋ねてくる柊。
「柊、喉渇いてるだろう?待ってて、直ぐに水を持ってきてあげるから…」
「いやだ…!喉なんか渇いてない…!だから、行かないでくれ、楓…!」
「大丈夫だよ、柊。直ぐに戻ってくるから。ちゃんと水分をとらないと…」
「―――って……なぃ……」
「…え?」
か細い声で何かを言う柊の顔を覗き込むと、柊は涙を流していた。
「…すぐ、戻ってくるからって……言ったんだ…戻ってくるから、大人しく待ってなさいって……」
「柊…?何のことだい…?」
「俺…言う通り、待ってたんだ…。大嫌いな雷が鳴り出して…不安で…死にそうで……でも、俺がちゃんといい子で待ってたら、帰ってきてくれるって……ずっとずっと、待ってたんだ…」
虚ろな目で涙を流す柊。
「―――だけど…ッ、帰って来なかった……!!何日待っても、母さんは帰って来てくれなかった!!」
「―――ッ!!」
柊は再び僕にしがみついて泣き出した。
―――柊に初めて会った時。
母さんから、柊は何日間も家にひとりぼっちで放置させられていたのだと聞いた。
柊は、雷が嫌いだ。
雷が鳴っていると必ず僕のそばに自分からやって来る。
口には出さないけれど、雷が鳴っている時に一人でいるのが不安なようだった。
―――それは、親に放置されていた時のトラウマだったのか……。
柊は暗い部屋にひとりぼっちで、孤独と飢えに耐えていたんだ。
いつ帰ってくるかも分からない母親のことを信じて―――。
柊のことは何でも知っているはずだったのに。
柊が雷を嫌う理由を今更知って呆然とする。
―――窓の外では、ゴロゴロと雷が鳴っていた。
―――僕が黙っていると、何を思ったのか柊は突然着ているシャツのボタンを外しはじめ、服を脱ぎ出した。
「…っ!?柊、何してるの…!」
ただでさえ熱があるのだから、身体を冷やして悪化させたら大変だ。
僕は柊が脱ぎ落とした服を拾おうと身を屈めた瞬間―――
ドサッ
「っ!?」
柊が僕を押し倒し、キスをしてきた。
「ッン、んぅ…ッ」
「ハア、ハア…ンンンッ、んむ…っ、んうぅ…!」
ピチャピチャと柊が僕の舌に自分の舌を絡める。
ぎこちない動きだけれど、必死に僕の唇に吸い付いてくる柊に驚きを隠せない。
柊からキスをしてくるなんて初めてだったから。
「い、一体どうしたの柊…?」
「…ッ」
僕は上半身を起こし柊の肩を掴んで引き離す。
すると柊は泣きそうな顔をして―――次の瞬間、僕の下半身に顔を埋めてきた。
「っ!?」
あまりのことに思考がついていかず、僕はただ呆然とした。
柊はズボンのチャックを下ろし僕の欲望を取り出して、あろうことかソレを口に含んだのだ。
「んむ…っ、ん…、んん…」
「ッ!!―――ひ、らぎ…!?」
先端を口に含んで、ペロペロと僕のソレを舐める柊。
不器用な舌使い、苦しそうに眉根をよせて涙目になりながらも必死に舌を這わす柊。
以前、本当に数回だけ、柊にお仕置きと称してこういう行為を強要したことはある。
その時もとても嫌がって苦しそうにしていて―――なのに、柊が自分から、こんなことをするなんて…!
「ん、ん、んぅ…ッ、ぷはっ、…かえで…、どうだ…?気持ち、いいか…?」
「―――ッッ!!」
涎と僕の先走りを口の端から滴ながら悲しそうにすがり付くような視線をしてそう言う柊に、我慢なんか、出来なかった…。
ドッ
「ぃ…ッ」
僕は思い切り柊を床に押し倒し、乱暴にズボンと下着を剥ぎ取ると、昨晩何度も交わったソコに自分の欲望を思い切り突き立てた―――
「ひ…ッ!あ、ああああああああああああッ!!」
「―――ッ!…らぎ…!柊…!!」
ズンッ、と、遠慮なく僕は柊の一番奥までソレを突き入れる。
突然のことに柊は背中を仰け反らせてビクビクと身体を震わせた。
昨晩散々なぶったソコはまだ柔らかく、僕自身も柊が濡らしてくれたお陰で抵抗なく根元まで入った。
「う……ぁ…ッ」
弱々しく喘ぐ柊を見てハッとする。
柊は今高熱で苦しい状態なのに…!
いくら柊から刺激してきたとはいえ、病気で苦しんでいる柊を何の躊躇もなく犯してしまった―――
「ッゴメン、柊…!すぐ抜くから…!」
僕が腰を引き柊の中から出ようとすると、柊は僕にしがみついてきた。
「や…!ダメだ…!!」
柊は足を僕の腰に絡めて僕が出ていこうとするのを拒んだ。
「柊…?」
僕にしがみつく柊の顔を覗き込むと、柊は目をギュッと瞑り、唇を噛み締めて震えていた。
―――いつもの、柊。
この行為を嫌っている顔の柊だ。
だけど、どうして今は僕にすがりついているのだろう。
この行為は、柊を苦しめるだけのものなのに―――。
そう思っていると、柊は目尻から再び涙を流した。
「ぅ…ッ、中に出して、いいから…!楓の好きなようにしていいから…ッ、嫌だって、言わないから……楓の言うこと、何でも聞くから…!!」
「柊…?どうして…こんな…」
「だから…、俺のこと、嫌いにならないで…っ、…ッ俺のこと、おいてかないで…ッ!!」
「―――柊……ッ」
子供のように泣きじゃくりながら、僕にすがりつく柊。
―――柊は、僕に嫌われたくなくて、こんなことをしているのだ。
母親が柊を見棄てたように、僕も柊のことを捨てるのだと思っているのだ。
こんな行為は大嫌いなはずなのに、毎晩泣いて拒むほど嫌いなはずなのに、僕に嫌われたくない一心で僕に身体を開いている。
―――いや、毎晩柊を抱く時はいつもそうだ。
口では嫌だと言っても、力づくで僕を押し退けたりなんか絶対にしない。
いつも泣きながら嫌だと言いながら、この行為に耐えている。
それは全部、僕に見放されたくないと思っているからだ。
―――僕は柊がどんなことをしても、嫌いになんてなれないのに。
僕が何度柊のことを好きだと言っても、柊はその言葉を信じない。
いつか僕も母親同様、柊のことを嫌いになって離れていってしまうと思っている。
―――僕達家族に出会うまで、生まれてからずっと、誰にも…両親にさえ愛されずに育った柊。
母親に『あんたなんか生むんじゃなかった』『アンタさえいなきゃよかったのに』と毎日のように言われ続けた柊は、自分の存在自体を悪いことだと洗脳されている。
だから、そんな自分を愛してくれる人間なんかいないのだと思い込んでいる。
―――柊の両親が柊にかけた、解けない呪い。
だから僕がどれだけ独占欲を誇示しても、僕がどんなに柊のことを愛していると言っても、柊はそれを信じることが出来ないのだ。
―――僕のこの想いは、柊には届かない。
僕では、柊を救ってやることが出来ない。
改めてそう実感し、心が傷んだ。
だけど、例え信じられないとしても、少しだけでもいい、今腕の中で震えている柊を安心させてやりたい。
「…柊…泣かないで…。僕は、柊のことが好きだよ…。世界で一番、愛しているよ…。」
涙に濡れる柊の頬にキスを落とす。
「うん…、俺も…ッ、好き…だから…!嫌いに、ならないで…!」
「…ん…ッ!」
柊が僕に快楽を与えようと、自ら腰を動かす。
「ハッ…ハッ…、楓…ッ、んっ……気持ち、イイ、か…?…ッンァ、…ハァ…ッ、頼む…、楓…!何でも、するから…ッ!だから…そばに、いてくれ…!」
「―――く…!柊…ッ!」
泣きながら、必死に腰を振る柊。
今すぐに思う様めちゃくちゃに突き上げたい衝動を抑え、僕は柊を抱き締めて、緩やかに腰を動かした。
「ん…ッ、は…、かえ…ッ、どうし…ッ、いつもと、違っ…」
「ん…ッ、いつもと、違うかい…?」
「ぅん…、いつもより…、優しい…ッ」
「そっか…、そう、だね…。ごめんね…いつもこうして、優しく抱いてあげたいって、思ってるのに…歯止めが、きかなくて…ッ」
「あ…ッ、はぁ…!ああ…!」
いつもより控え目な喘ぎ声。
だけどいつもとは違い、苦痛だけの表情ではなく、とろんとした目付きになっている。
「柊…、気持ちいい…ッ?」
「うん…、気持ち、いい…ッ、あ…ッ、楓…ッ、楓…!」
ゆっくりと柊の感じる部分を優しく突くと、柊は素直に喘ぐ。
普段では見ることのない柊にいとおしさが込み上げる。
―――そうだ、僕はずっと…こうやって柊と抱き合いたかったんだ…。
明日になれば、きっと柊はまたこの行為を嫌がる。
そしたら僕はまた柊を無理矢理犯してしまうだろう。
…だから、今だけは優しく抱いてあげたい。
「あッ、かえ…!も、イク…!イク…っ!」
「うん、いいよ…!僕も、もう…!」
「あ、あ、あ…!――――ッッ!」
「くぅ…ッ!」
柊が果て、僕はその刺激に達してしまいそうになるのをぐっとこらえ、柊の中から己を抜き、柊のお腹の上に欲を吐き出した。
「――ハァ、ハァ…」
息を整えながら柊を見ると、柊は再び気を失い眠っていた。
僕は再び柊の身体を綺麗に拭いてあげて、服を着せてベッドに寝かせた。
柊の寝顔を見る。
いつもよりあどけない寝顔は、どれだけ眺めていても飽きることはない。
―――自分でも、どうしてここまで柊のことを深く深く愛しているのか分からなかった。
柊が望むなら、柊以外の世界中の人間を殺したって構わない。
柊が死ねというなら、僕は喜んで自ら命を絶つだろう。
―――それほどまでに、柊を愛しているのに、この想いは決して柊には届かない。
それでも、いい。
僕が死ぬまで、柊がずっと僕だけのものでいてくれるなら、それ以上は望まない。
柊が愛情を信じられなくても、僕はずっとずっと柊を愛してあげるんだ……。
そう心に誓って、僕は眠る柊の手を握り続けた―――。